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2009/レポート1
(取材報告)

平成21年度新規採用職員研修 「危機管理」 /防災課  その1
 
/区危機管理室防災課(4月22日13時00分〜16時00分

司会の阿部主任 2009年4月22日13時より、練馬区職員研修所において、保育士、児童担当職員(学童保育指導員等)といった新任の福祉職の皆さんに対する研修会が行われました。研修は3日間に及び、情報に関する研修や、消防署による普通救命講習も受講しました。
 このレポートは、その3日間の最後に行われた危機管理研修のうち、防災課が担当した研修に関するレポートです。
  なお、こうした研修は、福祉職以外の新任職員にも実施されています。
  今回の司会進行は、防災課庶務係の阿部友和主任(写真右)でした。

※申し訳ありませんが、今回のレポート中に記載されている<資料>はあくまで、区内部の研修資料であることから再配布が許されていない図表も含まれます。従いまして、その性質上、加工・抽出・印刷ができない形させていただいておりますので、ご了承ください。

区危機管理室長

■ 「練馬区の危機管理」(要旨)/危機管理室 平野和範室長

  地震のときや子どもさんが不明になったときなど、区内在住の人には、臨機応変に対応していただくことになります。
 なにかあったとき、どれくらい臨機応変に対応できるかが危機管理です。
 災害時には、大きく言って自助、共助、公助の3つがありますが、その考え方にしたがって危機管理は成り立っています。地域は、自らのことは自らで守り、地域で助け合うことが基本です。
 皆さんの保育園の近くの小中学校が避難拠点です。その場所を知っておくことも大切です。

竹岡係長 防災研修「練馬区をとりまく災害と区職員としての心構え」(要旨)
 /危機管理室防災課区民防災第二係 竹岡博幸係長
※ (ご紹介)東京都の派遣期間、危機管理に携わりました。
※ 講義で使った資料は、<資料1>です。申し訳ありませんが上述したとおり、パソコン上でのみ見ることができるpdfファイルとなっています。

 「危機」とは、いったいなんでしょう?
 地震は? 台風は? 新型インフルエンザは? 区のパソコンのデータを消してしまったことは? これらは危機に当たるでしょうか。

 これらはすべて、危機をもたらす可能性があります。練馬区危機管理指針では、危機の種類として、甚大な自然災害、特殊災害(大規模災害)、武力攻撃・緊急対処事態、健康危機、生活上の危険などが定められていて、これには情報漏えいも入ります。このように危機を招く機会は山のようにあります。
<資料1>2,3ページ

  危機とは、「練馬区危機管理指針」によって

  1. 区民の生命・身体・財産を脅かす重大な事態
  2. 区の行政運営・行政サービスに重大な支障を及ぼす事態
  3. 区の行政信頼を著しく失墜させる事態

と定められています。
 したがって、「危機管理」とは、「危機を未然に防止し、また発生した時に被害を最小限に抑制するための諸活動」であり、危機管理には、平常時に行う「危機の未然防止活動」「緊急対応の事前準備」および「緊急時の対応」「危機終息後の対応」などがあります。<資料1>4,5ページ

 次に自然災害について、掘り下げていきましょう。
 区をとりまく自然災害の種類は、地震と水災害の2つです。

【地震について】
 日本は地震大国です。世界で発生したM6以上の地震の約2割が日本で発生しています。<資料1>7ページ
 最近では、昨年も岩手・宮城内陸地震などがあり、いつ東京でも地震が起きてもおかしくない状況です。
ディズニーランド沖を震源とした地震が起きた場合

 南関東(左図)で今後30年以内にマグニチュード7程度の地震が起きる確率は、どれくらいだと思われますか? <資料1>8,9ページ
 阪神・淡路大震災はマグニチュード7.3、新潟県中越沖地震はマグニチュード6,8。同じ程度の地震と思ってください。
  1)10%  2)30%  3)70%
 (多くの人が70%に手をあげる)その確率は70パーセント。大地震はいつ起きても不思議ではありません。

 では、別のリスクはどれくらいの確率でしょう。
 同じ30年以内に発生する確率として、火災で死傷する確率は0.2パーセント、交通事故で死亡する確率は0.2パーセント ジャンボ宝くじで100万円以上当たる確率(年4回20枚ずつ買った場合)は、0.3パーセントです。
 皆さん、天気予報で降水確率70%といわれたらどうしますか? 私なら、傘をもって出かけます。こう考えると、地震にも備えないといけません。 <資料1>11ページ

 練馬区の被害想定です。 <資料1>12ページ
 東京ディズニーランド沖で、マグニチュード7.3の地震が、冬の夕方18時に、風速秒速15メートルのときに発生した場合、区内も甚大な被害が出ます。

【水災害について】
 最近では「ゲリラ豪雨」という言葉が聞かれるようになりました。
 過去10年間の区内の水害による主な被害はこちらです。<資料1>14ページ
 平成11年7月21日に起きた、いわゆる「練馬豪雨」は、1時間に131ミリもの雨が降りました。この記録は未だに都内の第一位の記録となっています。
 平成17年9月4日の大雨では、都内で6000棟の浸水被害が発生しました。区内でも石神井川の一部が氾濫し、大きな被害が出ています。レーダーによる雨雲の様子はこちらです。<資料1>15ページ
南大泉図書館外の手すり付近まで水が押し寄せました お隣の中野区妙正寺川北原橋付近の写真です。<資料1>16ページ
 練馬区立南大泉図書館も、外の手すり付近まで、水がきたようです(写真右)。図書館のなかの様子と本も被害です。多くが廃棄処分となりました。
<資料1>17から19ページ

 なぜ、このような豪雨が発生するのでしょう。
 1時間に50ミリ以上の雨は、気象庁では非常に激しい雨にあたります。過去15年の豪雨発生状況の分布をみると、山手通りから環八通りの間など、区部西部付近や多摩西部に集中しています。<資料1>20ページ
 このような豪雨が降る最近の説では、ヒートアイランド現象があります。ヒートアイランドなどによって、都心部の地上近くの湿った空気が暖められ、大きな積乱雲を作ります。このようにしてできた積乱雲が、3方向からの海風により23区北西部上空で集まったことで、集中的に大雨を降らせると言われています。(<資料1>21ページ。「東京都豪雨対策基本方針」より)
 とはいえ、いつも起きるということではなく大気が不安定なときに、豪雨になる場合があります。

 災害時において、区職員には、何が求められているでしょうか。
 災害が起きた場合、区にはまず、区民の生命・身体・財産を災害から守ることが求められます。大きな災害では危機管理室内職員だけではまかないきれないので、役割分担により全庁的に職員すべてが災害対策業務に従事することが職務となります。<資料1>22ページ
  区には水災害を主とした対策に関する参集(動員)基準があります。自分がどの段階で動員されるかを、確認をしておいてください。主に水災害対策としての動員の段階は、第1次から第4次まであります。<資料1>23ページ
 地震による参集基準もあります。緊急初動要員とは、災害発生時において、あらかじめ指定された参集場所に出動し、応急活動を行う職員です。それに当たっていない一般職員も指令により参集される場合があります。誰もが災害対策要員を担います。また、震度6弱の場合は、指令を待たずに即参集となります。<資料1>24ページ

 最後に、災害対策における練馬区職員としての日常の心構えです。
 まず、自分の家の安全確保をはかっておいてください。地震のとき、自分や家族の生命は大丈夫でしょうか。寝ている場所に、落ちてくるものとかありませんか? 家具を金具で固定したり、ガラスにフィルムを張るなどしてください。
 その他に、物を買ってこなくてもできることとしては、今夜から、スニーカー等を枕元においておきましょう。割れたガラスを踏むことなく逃げることができます。思い立ったら吉日です。非常用の物資、生活用品など、最初の3日分も備えるようにしておきましょう。<資料1>25ページ

会場の様子 また、職場の安全確保もはかってください。来庁した区民と職員の安全も確保しましょう。棚の上にあるものの整理整頓、避難誘導など、職場の安全対策を実施してください。
 緊急の出動、参集に備えて、準備をしておいてください。防災服など、行動しやすい服装で参集してもらうことになります。水、食料、手袋等一式を、ふだんから自宅に備えておいてください。<資料1>26ページ
 そして、ふだんから家族を含めた周辺の皆さんに、理解を求めておいてください。家族が不安ななかで参集しても仕事に手がつかないこともあります。こういった事態では参集しなければいけないと、理解を深めておくことが大切です。災害用伝言ダイヤル171など、家族同士の連絡の仕方や安否を取り合う方法も話し合っておいていただきたいと思います。<資料1>26ページ

 区民の生命・身体・財産を守るために、練馬区職員として、皆さん一人ひとりが災害対策業務としての職務を果たすことを期待しています。

<司会>
 各職場で対応マニュアルは整備していると思いますので、職場では興味をもってのぞいてもらえれば、と思います。

原田主任■ 災害支援体験談「新潟県中越沖地震」(要旨)/防災課庶務係 原田崇主任
 ※ 講義で使った資料は<資料2>です。申し訳ありませんが上述したとおり、パソコン上でのみ見ることができるpdfファイルとなっています。
 ※ 防災課が当時作成した「新潟県中越沖地震 現地レポート」もありますので、あわせてご覧ください。

 平成19年7月16日、新潟県を襲った地震の規模はマグニチュード6.8、最大震度は6強で、被害の状況は死者15人、負傷者2,345人、全壊家屋1,024棟、半壊家屋1,441棟でした。<資料2>1から3ページ

1階がつぶれてしまういわゆる「層破壊」といわれる現象商店街のアーケードの奥の家が被害にあっています 後に新潟県中越沖地震と命名されたこの地震の2日後に柏崎市避難所、私たちは、柏崎小学校に向かいました。
 柏崎市内の様子です。(写真で、倒壊した家屋、街中の様子、避難所、食中毒等の注意喚起などを説明)
 <資料2>4から13ページ

 ライフラインとは、どんなものを言うでしょう。電気、ガス、上・下水道、電話がありますが、広い意味では、物流ルートなども含まれます。<資料2>14ページ

 大きい地震が起きると、一般に、これらは使えなくなります。柏崎市でも、すべてがストップをしていました。そこで、炊き出しが行われました。自衛隊がもつ特殊な機械を使って調理することができ、皆に、食料が配給されました。配給は、避難してきた人のためだけではありません。建物が倒壊していなくてもライフラインが使えなくなっていましたので、家にいても調理ができません。よって、避難所にいる人以外の人も、食事の時間になると列になって配給を受けに来ていました。揚げ物も作ることができました。<資料2>15から19ページ

自衛隊提供のお風呂 小さな給水車、お風呂も自衛隊が提供しました。風船のようなタンクに水が入っています(左写真)。現地は7月でとても暑かったため、お風呂に入れないことが辛いと訴える方が何人もいました。<資料2>20、21ページ

 避難所での光景です。連絡用の掲示板で被災者に周知しています。<資料2>22ページ
 仮設トイレです。トイレは食料より大事と言えます。食べることは我慢できても、トイレは我慢できません。<資料2>23ページ
 物資は日本全国から集まってきていましたが、仮設トイレも全国から集まってきていたので、数としては足りないということはありませんでした。避難所ごとに食料を管理していましたが、ある避難所では、食料足りないから送ってといったことや、賞味期限が切れてた食べ物が届けられたなど、混乱したなかでとても苦労していました。<資料2>24、25ページ

 いろいろな部屋が設置されていました。救護所や、(子どもたちのための)緊急心の相談室、福祉避難所(高齢者他)等です。<資料2>26ページ
 この避難所には全国のマスコミが終結し、あまりにも過剰な報道のため、物資が集まりすぎて大量廃棄することになりました。

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レポーター
秋山 真理(ねりま減災どっとこむ)

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